【手術症例Case1】11歳の猫の甲状腺腫瘍

受診のきっかけ

11歳のメスネコちゃんが頸部の皮膚の下にしこりがあるとのことで受診されました。

気づいたのは数日前ということで、いつごろからできたかは不明、

元気や食欲に変化は無く、体重も以前と変わらない、とのことでした。

初期治療と細胞診~手術までの経緯

その時点では4㎝×2㎝×1㎝と、やや扁平で気管の上ほぼ中央に位置していました。

まずは炎症性疾患を疑い、抗生物質内服で経過をみることになりました。

1週間後、しこりはやや増大傾向、初診時に比べ右側に寄っていました。

甲状腺ホルモンの値(T4)も軽度上昇ということで甲状腺の腫瘍性疾患を疑い細胞診を実施しました。

穿刺の際のエコーでは嚢胞を認めました。

細胞診の結果は上皮性悪性腫瘍の疑い、ということで更に外部検査機関においてCT検査を実施、右甲状腺癌と仮診断がつき、肺野やリンパ節への転移像も認めなかったため、切除手術をすることとなりました。

手術とその後の経過

  ≪手術の経過≫

 手術前の術野 かなり腫大した腫瘤が認められます

 甲状腺を覆う筋肉を剥離

 血管が増生しているため慎重に止血

 周囲組織より剥離していきます

 直下の反回神経を傷つけることなく切除できました

 5㎝×3㎝×2㎝の摘出腫瘤

しこりは最終的にかなりの大きさとなりましたが、周りの組織への浸潤もなく完全に切除できました。

上皮小体との境界がはっきりせず、一緒に切除することとなりましたが、術後のカルシウムの値はほぼ正常値、T4も軽度低下にとどまって、経過は良好です。

病理検査の結果、「甲状腺の濾胞上皮に由来する充実性甲状腺癌」と診断されました。

今後は再発や転移を注意深く診ていくこととなります。

総括

ネコは甲状腺機能亢進症に罹患することが多く、その原因として甲状腺の過形成や腫瘍があげられ、頸部の腫れとして現れます。

症状としては食欲増進にも関わらず痩せてくる、攻撃性が増す、などですが、この症例では特に臨床症状はなく、頸部の皮下のしこりのみでした。

飼い主さまの日頃のケアで比較的早く病気を発見できたと思われますが、転移率も高いため甲状腺ホルモンバランスやカルシウムの値なども含めて今後の経過を注意深くみていく必要があります。

病気の早期の発見のためにも、日頃のスキンシップを深め、定期健診などをおすすめします。

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