【手術症例Case5】16歳の犬の口腔鼻腔瘻に対する粘膜フラップ形成による閉鎖法

1. 手術の概要

  • 手術日: 2024年09月

  • 手術対象動物: 犬(16歳9ヶ月、オス)

  • 症状と診断: 重度の歯周病により、流涎が止まらず、鼻汁も見られる状態でした。また、ご飯を食べづらそうにしており、食事の際に痛みがある可能性が考えられました。

2. 手術の目的

  • 目的: 歯石を除去し、病的な歯を抜歯することで、口腔内の痛みを取り除き、生活の質を改善すること

  • 期待される結果: 流涎の改善、鼻汁の減少、および食事のしやすさの向上

3. 手術の準備

  • 事前検査: 血液検査を実施し、高齢ながらも麻酔が安全に実施できる状態であることを確認しました。

  • 準備内容: 高齢であり全身麻酔のリスクが高いことから、麻酔中のモニタリングを強化し、安全な管理を行う準備を整えました。

4. 手術の流れ

  • 手術開始時間と終了時間: 手術は午前10時に開始し、約2時間で終了しました。

  • 手術手順: まず全身麻酔下で歯石を除去し、その後、両上顎の犬歯を抜歯しました。犬歯は鼻腔にまで貫通していたため、フラップを形成して鼻腔と口腔を分ける処置を行いました。

R口腔鼻腔瘻

R粘膜フラップ形成による閉鎖

L抜歯後の口腔鼻腔瘻

L粘膜フラップ形成による抜歯窩の閉鎖

  • 麻酔の状況: 安定した全身麻酔の管理を行い、ドパミン、フェンタニル、ケタミンの持続点滴を行うことで動物の負担を最小限に抑えました。

5. 手術後の経過

  • 手術直後の状態: 手術後の意識回復は良好で、呼吸も安定していました。

  • 痛みの管理: 術後は鎮痛薬を使用し、痛みを管理しました。

  • 今後のケア: 流涎はなくなり、鼻汁も減少しており、快適に食事をとれるようになりました。術後1週間は柔らかい食事を与えることを推奨しました。

6. 回復の見込みと注意事項

  • 回復の目安: 手術後の食事状況が改善しているため、完全な回復まで1〜2週間のケアが必要です。

  • 飼い主へのアドバイス: 術後のケアとして、口腔内の清潔を保つために定期的なチェックを行い、歯周病の再発予防に努めてください。

7. 手術に対する総括

  • 手術の評価: 高齢の動物でしたが、手術は予定通り進み、術後の経過も非常に良好でした。流涎や鼻汁もなくなり、快適な日常生活を取り戻せたことが確認できました。

  • チームの協力: 麻酔中のモニタリングを細心の注意を払い行い、チーム全体で高齢動物の負担を最小限にするために取り組みました。

8. 飼い主さんへの感謝

この度は大切なわんちゃんの治療を任せていただき、ありがとうございました。高齢での麻酔に不安があったかと思いますが、ご理解とご協力をいただき、無事に手術を完了することができました。今後も引き続き健康管理のお手伝いをさせていただければと思います。

9.院長の総括

「歯ブラシをしっかりやりましょう!」と言うのは簡単ですが、実際はなかなか難しいかと思います。

当院では1年に1回の全身麻酔下での歯石除去を推奨しております。2019年、アメリカで犬における1年に1回のスケーリングが死亡リスクを約20%減少させる可能性があるという文献が発表されました。

歯周病は心臓病・腎臓病にもつながる侮れない疾患で、予防・治療が必要なことはいまさら言うまでもありません。

しかしながら多くの犬猫では歯周病が放置され、高齢になり痛みが生じてから治療を始めるケースがほとんどとなっております。

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